触診が上手い人と下手な人のたった2つの違い

あなたは触診に自信がありますか?

自信がある人は見なくても大丈夫です。おそらくできています。

あんまり自信がないって言う方だけ閲覧していただけたらと思います。

今回も触診について見ていきます。

前回も触診について見ていきましたが、触診が上手い人と下手な人では絶対的な部分があります。

そもそも、そんな触診が何故難しいのかをご存知ですか?

前回にも伝えましたが、そもそも何故触りわけが難しいのか?

その理由はいろんな人と話していくと大きく分けて3通りが上がってきました。

難しい理由は

1. イメージがわからな

2. 触り方がわからない。力が入ってしまう。

3. 筋肉の構造体を知らない。(皮膚の柔らかさ、筋肉の硬さなど)

そんなこんなでタッチの概念について前回は見て行きました。

予測的に触っていかないことにはなかなか触ることは難しいことがわかりましたね。

そんなこんなをいろいろを調べていたらこんなことも思い浮かびました。

表在覚、深部覚を両方とも刺激してしまうため、神経によっては伝わる速さや違いがあるのでは?

ということに

前回考えていった中で、深部感覚をつかっていかないと上手くならないのでは?という話をしましたが、

今回は感覚経路の速度の違いによって触診が難しいし、どのように対策していくことがいいのかについて見て行きましょう。

まずは感覚の経路について考えて行きましょう。

それぞれの感覚の伝導経路

ここからはまず、繊細な触圧覚・深部覚の経路について見て行きましょう。

下肢と上肢、顔面で経路が少し違いますが、今回は上肢の方に着目していただけたらと思います。

触診するという行為は上肢で行なっていますから上肢について見ます。

上肢の伝道路

手で触わる→同側性の後索→楔状束→楔状核→交差して反対側の内側毛体→視床(VPL)→一次体性感覚野

というルートになります。

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

そして一次体性感覚野に届いたら初めて感覚として入ります。

感覚の概念に関しては以前説明していますのでそちらを見てください。

次に粗大な触圧覚について見て行きます。

粗大な触圧覚では

対側の前索→延髄・橋・中脳の脊髄毛体→視床(VPL)→一次体性感覚野

を通ります。

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

この経路ではあくまで物が触れたか触れていないかについてしかわからない。またどのような性質の物が触れたのもわからない。(渡辺正仁:2009)

あくまでこの経路に関しては受動的な経路なので触診には大きく影響を受けなさそうですね。

次に伝導スピードが関与していく場所について見ていきます。

それはどこかというと・・・

一次求心性線維になります。

一次求心性線維とは手や足から入ってきて情報を脊髄に送る役割をしてくれているものになります。

要するにここの部分

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

この部分で速度に変化が出てくる部位になります。

ではどのようにして変化を起こしているのかについて見て行きましょう。

手や足の末梢の受容器とは

私たちの手や足には様々な感覚受容器があります。

この感覚受容器は触られたり、物を触った時に反応する

電気のスイッチのような物です。

この電気のスイッチを押すと、さっきの一次求心性線維に電気が通って行き、脳にまで電気が到達します。

脳に電気が到達すると感覚としてわかってきます。

その感覚受容器にも様々な種類があり、この受容器を押した時にはこの一次求心性線維が反応すると言ったようにそれぞれで一次神経線維が異なります。

生理学テキスト 大地陸男 東京文光堂本郷;2011 より引用改変

皮膚の受容器には、メルケル触盤、マイスネル小体、ルフィ二小体、パチニ小体、自由神経終末という受容体が存在しています。

皮膚の中にはこんなにもいろいろな受容器があり、このスイッチが押されることで電気が流れていくのです。

次は深部覚について見て行きましょう。

深部覚を感知するには、筋紡錘やゴルジ腱器官、関節受容器によって感知してくれています。

この筋紡錘やゴルジ腱器官はどこに存在しているのかというと・・・、

そう、筋肉の中にあります

人体の正常構造と機能Ⅷ 神経系(1) 河田光博ら 日本医事新報社 より引用改変

筋紡錘は筋肉が収縮した時や伸ばされた時にⅠa、Ⅱ線を伝って情報を脊髄に送って行きます。

ゴルジ腱器官アキレス腱など筋肉には腱が存在しますが、それが伸ばされたと情報が入るとⅠb線維を伝って脊髄に情報を送ります。

脊髄から脳へ伝わっていくことで、どれくらいの早さで関節が曲がっていっているのか?どのくらいの位置に膝があるのかなどがわかるのです。

そして関節受容器というのは股関節の機能構造でもお話しした関節包にあります。

関節包にはパチニ小体・ルフィ二小体や自由神経終末を通じて関節の動きの変化を感じることができるようになっています。

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社;2012

伝導速度と順応

ここからは伝導速度について見て行きます。

触診が何故難しいかという本題になります。

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

伝導速度がそれぞれの受容器によって違います。

1番伝導速度が早いのが深部感覚で筋紡錘、ゴルジ腱器官はとてつもなく早い線維だということが分かりますね。

そして触圧覚・深部覚の関節受容器と筋紡錘の一部は混同しております。

たくさんいろんな感覚が入ることでより詳細に分かるのではとも思ったのですが、、、、

たくさん感覚が入ること自体が難しくしているのか?そこについては不明な部分です。

ただ面白ことがわかりました。

ここで見て行きたいのは順応いう概念です。

順応とは刺激が持続していても感覚が次第に弱くなることを言います。

簡単な言い方をすると「慣れ」になります。

例えば、私たちが服を着るとします。あなたもおそらく今服を着ているでしょう。

その服を着る時には服の肌触りや皮膚との擦れる感じはとても感じやすいと思います。

しかし一度服を着てしまうとどうでしょうか?あなたは四六時中服の擦れる感じを感知できているでしょうか?

多分できていないと思います。

このように服を着ていることに慣れてしまって感じにくくなること、それを順応と言います。

順応のしやすさはそれぞれ違いがあり、触覚と嗅覚は特に順応しやすい特徴があり、逆に痛覚や位置感覚順応しにくいとされています。

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

このせいで筋肉を触っている感覚は徐々に変化していき、どのような物なのかがわからなくなってしまうのです。

伝導速度もそれぞれ違いがある。感覚も徐々に変化してくる。難しいのも納得の理由ですね。

筋肉を触るために・・・

今まで筋肉を触るのが難しい理由について見ていきましたが、このままでは触れる気がしないですよね。

では筋肉をどのように触っていけば良いのかについて見ていきます。

結論から言うと

「ゆっくりやさしく触る」

それが僕の中での筋肉を感じ取るための方法だと思います。

それだけって思いますよね?

理由を今から説明していきます。

先ほども言いましたが、難しい理由には「伝導速度もそれぞれ違いがある。感覚も徐々に変化してくる。」

でしたよね。

じゃあ、「速度を同じにはできないけどなるべく変化を少なくしてしまえばいいじゃん」て考え方です。

ここで見て欲しいのは順応速度です。

皮膚は繊細な触覚を伝えないといけないので、これなしには話になりません。

なので繊細な触覚を飼い慣らしていかなければならないということです。

そこで見ていきたいのは扱いやすそうな感覚受容器です。

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005より引用改変

それがルフィ二小体とメルケル盤です。

こいつらの順応速度を見ていくと、ルフィ二小体「非常に遅い」とメルケル盤「遅い」となっています。

なので他の感覚受容器をまずは順応させてしまえと言うわけです。

ゆっくりじわじわ触ってあげる。

そうすることでマイスナー小体、パチニ小体、毛包受容器を感じにくくして変化を出ない状態にします。

そしてルフィ二小体、メイケル盤の特徴を生かすために、軽く接触してあげることが重要になります。

メルケル盤の適刺激は軽い接触、ルフィ二小体は皮膚の伸展(伸び具合)・変形です。

この時力が入ってしまうとメルケル盤は刺激に反応しませんので気を付けましょう。

この方法で練習してとにかく触ること。

やさしく触って自分自身で手応えを感じてくればとフィードバックされ、触る力は強化されていきます。

なかなか難しいところもあると思いますが、根気よくお互い頑張りましょう。

本日はここまで。

それではまた。

参考文献

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のための解剖学 渡辺正仁 株式会社 廣川書店 ;2008  p358-360

生理学テキスト 大地陸男 東京文光堂本郷;2011 p93ーp97 

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社;2012 p33

人体の正常構造と機能Ⅷ 神経系(1) 河田光博ら 日本医事新報社 :2004  p54

人体の正常構造と機能Ⅸ 神経系(2) 河田光博ら 日本医事新報社 2005 p45−51

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