股関節の機能構造〜part5骨盤前傾に必要なあれ〜

あなたの患者さんは骨盤の前傾を行うことができますか?

股関節の機能構造編も第5弾。骨盤の前傾については第3段目です。

たくさんの要素がありますのでとても難しい限りですね。しかし頑張っていきましょう。

骨盤の前傾は起立に必要な要素だったり、歩行にも必要な運動になります。

前回は骨盤前傾は股関節屈筋群と脊柱伸筋群などのフォースカップル(力の釣り合い)で成り立っているって話をしましたね。

骨盤を前傾していく上でブレーキの役割になって、前に転げてしまうことを防いでくれている筋肉は大臀筋って話を詳しく見ていきました。

https://onlineprerehabilitations.com/2019/12/16/%e8%82%a1%e9%96%a2%e7%af%80%e3%81%ae%e6%a9%9f%e8%83%bd%e6%a7%8b%e9%80%a0%e3%80%9cpart4-%e9%aa%a8%e7%9b%a4%e3%81%ae%e5%89%8d%e5%82%be%e3%81%ab%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e5%a4%a7%e8%87%80%e7%ad%8b/

今回はフォースカップルのアクセル役について見ていきましょう。

骨盤を前傾させていく、腸腰筋の作用と役割

以前もお伝えしましたが、骨盤前傾は股関節屈筋群と脊柱伸筋群などのフォースカップル(力の釣り合い)で成り立っています。

例えば骨盤を前傾した時に前に行き過ぎてしまっては前にコケてしまう可能性があったりします。

逆に、後ろに引っ張る力が強過ぎた場合は骨盤を前傾に持っていけなかったりがあります。

前後の筋肉で協調的に筋肉が働いてくれることで骨盤の前傾は行うことが可能になるのです。

今回は骨盤の前傾のアクセル役である腸腰筋について見ていきましょう。

腸腰筋とは解剖学的に言えば、腸骨筋、大腰筋、2つからなります。

小腰筋は40%の人は欠損している(Nepple JJら・他;2012)ようなので今回は省いて見ていきます。

腸腰筋は骨盤上の大腿骨運動、大腿骨上の骨盤運動において強い屈筋の役割をになっています。

腸骨筋と大腰筋の線維は一般的に大腿骨頭のすぐ前方で癒合します。

腱は筋を小転子やその付近につなぐ役割をしてくれています。

そしてここで面白いのが腸腰筋の形状です

腸腰筋は停止付近で折れ曲がっているような形状になっているようです。(後方に30~45°

この折れ曲がりがあることで、最大伸展時に腱の付着角度を増強させ、股関節屈曲の筋のテコ比を増加させる作用があるようです。(キネシオロジー P532)

これはとても面白い特徴ですね。そんな作用があるなんて知りませんでした。

この折れ曲がりがあることによって、腸腰筋は強い股関節の屈筋作用をもっているのです。

ただこの折れ曲がりがあることで一つ注意する点があります。

それは股関節外転が生じると股関節外旋を補助してしまうことです。

筋肉の走行を考えていくとわかりやすいです。想像して見てください。

股関節が外転することによってもとにある位置よりも小転子を上方に引きやすくなってしまうのが原因です。

図はヒューマン・アナトミー・アトラス2020のスクリーンショット

それによって小転子が上を向くので大腿骨は外旋方向に引っ張られてしまうのです。

患者さんはどうでしょうか?

股関節が外旋、外転位で座っている患者さんは多いですよね。

患者さんは股関節がすでに外旋、外転位になっているので小転子は上を向きやすい状態になっているのです。

そのアライメントの修正を行なっていない状態で股関節を屈曲させていくと股関節屈曲のみならず、股関節外旋を補助してしまいますよね。

アライメント編でも言いましたが、股関節外旋すると骨盤は後傾方向へ誘導してしまいます。

腸腰筋をうまく働かせるためにも股関節外旋を修正して中間位で骨盤の前傾を行わないといけないということです。

腸骨筋

 起始;腸骨筋の上縁と内面

 停止;大腰筋の前内側面、大腿骨の小転子

 作用;股関節を屈曲、外旋させる

 神経支配;L2~L4

 筋連結;大腰筋、縫工筋、大腿直筋、内側広筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋、大腰筋


大腰筋

 起始;第12胸椎~第4腰椎の椎体と第1~4腰椎の肋骨突起(浅頭)、全腰の肋骨突起
 
 停止;大腿骨の小転子

作用;股関節を屈曲、外旋させる。腰椎を前尾方に引く。

神経支配;Th12~L3

筋連結;腰方形筋、横隔膜、腸骨筋、小腰筋、最長筋、腸肋筋 

また腸腰筋は股関節に加えて腰部と腰仙部に対して力を生じます。

腸腰筋は活動すると、骨盤を前傾させると同時に腰椎の前弯を増強させます。

腰椎の前弯は起こらないといけないところではありますが、過剰に働くことは疼痛を引き起こす可能性を秘めています。

先ほども言いましたが、骨盤前傾は股関節屈筋群と脊柱伸筋群などのフォースカップル(力の釣り合い)で成り立っている。

そしてここで重要になるのが腹直筋です。

腹直筋などの腹筋群が働くことで骨盤が安定して前傾が強くなりすぎることはなくなるのです。

腹直筋のような体幹筋によって骨盤を安定させることができなければ、腸骨筋は骨盤の前傾させることによって腰椎前弯を増強させます。

SLRではまず股関節の屈曲によって骨盤が動かなようにするために腹直筋が収縮する。そしてその後に、股関節の屈曲が腸腰筋によって行われるます。

Esola MAら(1996)は腹直筋によって骨盤が後傾し固定することで、骨盤前傾位能力を持つ股関節屈曲を中和させることができると言ってます。

腹直筋の固定がない場合は、股関節屈筋群の効率は悪くなり、腰椎前弯のみが増強する。

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社 より引用

腹直筋は廃用や脳卒中なんかでも筋力低下を起こしてしまうことが多い筋の一つ。

このような状態が続くことで椎間関節の圧迫が増加して慢性的な腰痛につながることがあるので注意が必要です。

腸腰筋を鍛えているけど骨盤の前傾がうまく誘導できない時は腹筋群にも目を向けて見ましょう。

本日はここまでにします。それではまた。

まとめ

・この折れ曲がりがあることで、最大伸展時に腱の付着角度を増強させ、股関節屈曲の筋のテコ比を増加させる作用があるようです。

・股関節が外転する股関節は外旋する。→骨盤は後傾方向に誘導されやすくなるので股関節は正中に直す。

・骨盤前傾の際に腰椎前弯が過剰に出現するときは腹筋群の評価もしなければならない。

参考文献

Nepple JJ, Brophy RH, Matava MJ, et al: Radiographic findings of femoroacetabular impingement in National Football League combine athletes undergoing radiographs for previous hip or groin pain. Arthroscopy 28:1396–1403, 2012

Esola MA, McClure PW, Fitzgerald GK, et al: Analysis of lumbar spine and hip motion during forward bending in subjects with and without a history of low back pain. Spine 21:71–78, 1996. 

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社 p533−535

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