股関節の機能構造〜寛骨を意識して触ると筋出力は上がる?〜

あなたは患者様で股関節の痛みや筋力低下、筋緊張低下に悩んだことはないでしょうか?

股関節は整形疾患の患者様はもちろんですが、中枢疾患の患者なんかも筋緊張低下を起こしやすい部位の一つになります。

そしてこいつらがやられると結構ADLの障害に影響を与えてしまってたりします。

ということで

今回は股関節について見ていきます。

何故股関節の影響がでてしまうとADLの障害が出やすいのかなどについて見ていいきます。

中枢疾患の患者の筋緊張が落ちてしまいやすい理由についてはまた今度。

それでは、いってみましょう。

股関節という構造体

股関節とは可動性と安定性を兼ね備えている関節になります。

解剖学的には立位、歩行、走行時の安定に適している特徴があります。

そのため、股関節周囲筋の筋力低下は全体として身体の可動性と安定性の低下をおこしやすいということになります。

では解剖学的な観点からまずは見ていきましょう。

股関節とは大きな球状の大腿骨頭と深いソケット寛骨臼との間の関節。

寛骨と腸骨+恥骨+坐骨の骨が癒合したものであり、左右の寛骨は前後で連結しています。

前方は恥骨結合で後方では、仙骨と連結します。

左右の二つの寛骨が前後で繋がったものを骨盤と言います。

プロメテウス 解剖学アトラス・解剖学総論・運動器系 株式会社医学書院 監訳者 坂井建雄 ・松村譲児 より引用

ここは僕も曖昧にしていました。


骨盤は上部身体と体幹の重さを座位時には坐骨結節で支え、立位歩行では下肢に伝える重要な役割を行ってくれています。

股関節は臼状関節であり、大腿骨頭は多くの靭帯と筋により寛骨臼にしっかり保持されています。

大腿骨頭はほぼ完全な球面であるが、骨頭中心のわずか後方にはくぼみ(大腿骨頭窩)がある。

大腿骨頭窩以外は関節軟骨で覆われている。(前方の方が厚さがある)

※関節軟骨とは
関節の荷重部を形成する特殊な型のガラス軟骨である。
 
関節軟骨は軟骨下骨への圧迫力の分配、分散、関節面間の摩擦を小さくする。

関節軟骨と滑液で覆われる2面間の摩擦係数は極めて小さく0.005~0.02。

氷と氷を合わせた時の摩擦係数は0.1とのこと。なのでめちゃくちゃ滑りやすいということ。

したがって正常な荷重活動における力は骨格系にダメージなしで吸収されるストレスへと減少される。

線維軟骨と混同しないように注意。

寛骨とは

寛骨臼は半球状のカップ型のソケットを持っている。でも浅くて不安定な形状となっています。

大腿骨頭がおさまっている場所は月状面と呼ばれています。

月状面の表面は関節軟骨で覆われ、ドーム状で上前方領域で最も肥厚(最大で3.5mm)しているらしいです。

この部位は歩行時最も圧力がかかると言われています。

プロメテウス 解剖学アトラス・解剖学総論・運動器系 株式会社医学書院 監訳者 坂井建雄 ・松村譲児 より引用

歩行時の股関節にかかる力は遊脚中期で一番低く体重の13%、立脚層では体重の300%以上の力がかかるようです。

300%もの力をどのように分散させるか?

それにはこの部位が活躍してくれています。

100%超えちゃってますからね。このシステムがなかったら大変中ことです。

その部位とは寛骨臼切痕という場所になります。

寛骨臼切痕がわずかに広がり、月状面がわずかに平らになります

寛骨臼切痕は読んで字の如く、寛骨が切られてるような形状に場所を指します。寛骨臼自体は完全な丸型になっておらず、寛骨横靭帯があるおかげで丸型になっているように見えます

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社 より引用改変

その部位の接触面がひろがってくれることで最大圧力を分散させてくれています。

このシステムのおかげで(緩衝メカニズム)で衝撃に対して耐えれることができているのです。

歩行時に寛骨臼にかかった衝撃はそのまま仙腸関節、恥骨結合に伝達される

これらの仙腸関節、恥骨関節の低可動性は股関節への衝撃を逃すことができなくなるため、過度の摩耗を生じる可能性がありますし、そのほかの部位が痛みを生じる可能性があるということです。

寛骨には寛骨臼窩という深い陥没があります。

ここは一般的に大腿骨頭とぶつかることがないので軟骨は存在しないと言われています。

そのかわり、大腿骨靭帯とか、脂肪、滑膜、血管などが存在しています。

そして寛骨で忘れてはいけない存在が関節唇です。

関節唇とは寛骨臼の縁に沿って付着しているもの。

横断面は三角形で関節唇はソケット凹面を深くして骨頭の縁をしっかり保持させ関節を安定させるのに役立っています。

関節唇は大腿骨頭の約30%を包み込んで関節の安定に関与しています。寛骨臼だけでは不安定なのです。

関節唇は滑液を留置して、関節的に滑らかな動きを高めて、関節軟骨の機能への負担を減らす役割もあります。

関節唇は外側1/3に対して、血液供給を受ける。

そのため十分に血液を受け取っているとは言えないため治癒能力は非常に低いです。

その代わり関節唇は固有受容フィードバックを有する求心性神経が豊富で、良くも悪くも感覚が良いので、損傷すると痛みを感じやすくなってしまう部位になります。

関節唇への刺激を意識して大腿骨を関節唇に押し付けながら股関節を動かすと筋出力も上がりやすい印象があります。

寛骨のアライメント

最後に寛骨臼のアライメントについて見ていきます。

寛骨臼のアライメント不全になると、実は大腿骨頭が十分に覆いきれない構造となっています。

それが慢性的に続くことで応力を増加させて、変形性股関節症などの疾患が誘発されてしまうわけです。

そのためには寛骨臼と大腿骨の角度がどの程度であれば正常であるのかについて見ていかなければなりません。

その角度は2つあり、CE角と前傾角になります。

CE角は成人の平均35°と言われています。

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社 より引用

覆う角度が減少すると脱臼のリスクが上がり、接触する面積は低下します。

要するにストレスがかかるだけでなく感覚までもが入りにくくなってしまうのです。

前傾角は正常では約20°です。正常な時でさえ骨頭の前方は露出するようにできています。

筋骨格系のキネシオロジー 嶋田智明ら 医歯薬出版株式会社 より引用

これだけ露出しているので前方には弱い構造なのです。

このままでは損傷されやすいので、関節の前には前関節胞人帯と腸腰筋腱で関節前方の損傷を塞いでくれています

しかし、股関節過外旋は骨頭を前方へ押し出してしまうため、大きなストレスを与えてしまいます。

股関節が外旋位になっているヒトは大勢いるので股関節前面が痛くなっているヒトは股関節の外旋を修正するアプローチが必要となってきます。

股関節のアライメント直す時は・・・


股関節の過外旋は大腿骨頭を前方に押し出し、全関節包靭帯と腸腰筋腱にストレスを与える。

股関節は中間位になることで骨頭と寛骨臼の接地面が増加する。

それにより感覚情報が入りやすくなるため、筋出力が増大しやすくなる。


感覚を入れるために大腿骨を臼蓋に押し込むイメージでアライメントを修正していく。 

ぜひ参考にして見てください。

股関節は可動性が多い分、伝えたいことが多いため、今回は寛骨についてメイン見ていきましたが、何回かに分けて見ていけたらとおもいます。

それではまた

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