痩せている人でも筋力を出して自宅に帰したい。医療人であればそんな思いはあなたもしたことがあると思います。
ということで
今回は筋力をどのようにしたらパワーが出やすいのかについて見ていきます。
痩せていてもこの概念を知っていれば力を出すことが可能かも知れません。
僕も苦手ですが、最後まで頑張って見ていきます。
筋と腱;力の発生装置
力の発生はアクチン−ミオシンだけではありません。筋肉の構造体についてはこちら
そのもの自体が収縮する物ではないですが、筋肉の助けをしていくれている存在についてまず見ていきます。
機能的な名称でいうと、並列弾性成分と直列弾性成分になります。
直列弾性成分は収縮蛋白と直列に位置する組織になります。
いい例が腱やタイチン(コネクチンとも言う)という大きな構造的タンパク質になります。
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タイチンは筋原線維で弾性タンパク質になります。
並列弾性成分は収縮性タンパク質を取り囲むかそれに並行して結合する組織になります。
例で挙げると筋周膜のような細胞外結合組織や他の構築的タンパク質を含む非収縮性組織は筋線維を取り囲むことでそれを支持しているのに役立っています。
関節を動かして筋を伸ばすストレッチは、並列弾性成分と直列弾性成分の両方を引き延ばし、筋にバネや弦のような抵抗や硬さを生み出します。
この抵抗感を他動的張力(静止張力)と言います。
並列・直列弾性成分の概念は解剖学の簡略的な記述であるが、筋を伸張した際に発生する抵抗感の大きさを説明するには有用になります。
並列・直列的弾性成分が筋とともに伸張された際、一般的な他動的長さ−張力曲線という物を見る必要があります。
この曲線はゴムバンドを伸張した場合と類似しています。
全く弛緩した(緩んだ)組織が伸ばされ、初期レベルの張力が生まれる臨界長に達した後、筋内の弾性(他動的)要素には他動的張力を発生し始めます。
この臨界長に達すると張力は徐々に強くなり、最終的には高い強度に達します。
そこからさらに張力が増してしまうと組織は断裂してしまいます。
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健常な筋の伸長による他動的張力は非収縮成分である細胞外結合組織、腱、そして構造的タンパク質の弾力に由来します。
これらの組織はそれぞれ異なる特有の固さを持っています。
筋が穏やかに伸長された際には、構築的タンパク質(特にタイチン)が筋において他動的張力を発揮していきます。
一方、筋が大きく伸長された場合には、細胞外結合組織、とりわけ腱が他動的張力を発揮する。
他動的−長さ張力曲線からは、筋−腱組織が力を発生させるための重要な構成要素の一つであるということ。
ここで考えていかないといけないのはタイチンを伸ばしたいのか、腱を伸ばしたいのかということです。
腱だけ伸ばしても、筋の長さが作れていなければ強い張力は生まれないということになります。
話を戻していきます。
筋の伸張による他動的張力は、重力に抗して関節を動かしたり固定したり、収縮している筋との物理的な連結を行うなど、多くの有用な役割を持ちます。
例をあげると早歩きをしている時の立脚後期における踵が離れる直前のアキレス腱と下腿三頭筋の他動的な伸張になります。
この際の他動的張力は筋の力を足部から地面へと伝達することを補助している。(Ib促通)
伸張された筋線維は特有の弾性をもっています。
それは伸張を生み出したエネルギーの一部を一時的に蓄積することができるという特徴です。
解放されたこの蓄積エネルギーは筋全体が本来有する力を増大させる。また伸張された筋は伸張力の増加に伴い、他動的抵抗力を増大させるといった特有の粘弾性も有しています。
弾性と粘性の二つの特徴は、プライオメトリック運動(筋や腱の伸張性や弾性を改善するトレーニング)に重要であります。
また穏やかな筋伸長における蓄積エネルギーは、筋の潜在的張力に比べると小さいですが、筋が最大限に伸長された際の損傷を防止することができます。
弾性は筋と腱の構成要素を保護するために強い張力を弱める機構であるⅠb抑制を行なっています。これはまた機会があれば。
自動的な長さ−張力曲線
筋組織は神経系からの刺激に反応して自動的に力を発揮させるための独特な構造をしています。
自動的な力の大きさはその瞬間のアクチンとミオシンの配置によって筋線維の長さは決まります。
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筋線維の長さの変化は自動的収縮であれ、他動的伸張であれ、アクチンとミオシンが重なる量を変化させます。
筋線維の理想的な静止長とは連結橋が最大となる長さと言われています。
上の図でいうBとCになります。
この時の自動的な力を最大にする長さということです。
筋節が静止長より長くなっても短くなっても潜在的な連絡橋の結合の数は減少する。
たとえ最大活動あるいは最大努力下であろうと発生する自動的な力はちいさくなる。
そのため自動的長さ−張力曲線は逆U字に描かれ、そのピークは理想的な静止長に一致します。
自動的な力と他動的張力の総和
自動的な長さ−張力曲線が他動的な長さ−張力曲線と組み合わさると全長さ−張力曲線となります。
自動的な力と他動的な張力の組み合わせによって、広い範囲での筋量にわたって筋力の発揮が変わります。
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短縮した長さ(α)では静止長が短く、他動的張力を発生させることはできません。
なので自動的な力だけが筋力を発生させる要因になっています。
逆に筋線維がさらに伸長された(c)は、他動的張力が最大に近く働くため、他動的張力が優位に力を発生させます。
bは静止長になり、自動的張力に加えて他動的張力が加わり始めるため一番強い出力が出るといくことになります。
ストレッチはリハビリでも多用されている印象があり、それは他動的張力にアプローチしています。
筋自体にもアプローチしなければ自動張力を加えたbでの筋発揮が出来ないということです。
ストレッチだけではなく、筋自体にもアプローチしていきましょう。
こんかいはここまでにします。