長年の痛みから脱却したい方へ〜慢性疼痛に対する認知行動療法の考え方〜

あなたは慢性疼痛ですか?そんなあなたは0か100かの思考になっていませんか?

というのも慢性疼痛患者は多くの人が痛みを極端に捉える傾向にあり、痛みがあっても遂行できるようなことも痛みを過剰に意識してしまい動作ができない人が多く存在します。

そこで今回はそんな慢性疼痛患者に対する認知行動療法について考えていきます。

認知行動療法の基礎と考え方

気分や行動は、認知、すなわち物事のとらえかたや考え方によって、影響を受けることから、認知行動療法は認知の隔たりを修正し(認知療法)、学習理論に基づき行動の変容や新たな行動学習を獲得すること(行動療法)を目的にするものになります。

また認知行動療法は心理療法の一つであり、行動科学・行動医学的アプローチでもあります。

慢性疼痛患者に対する認知行動療法は世界初の痛みセンターが設立されたワシントン大学の臨床心理士Fordyceによって1968年に提唱、導入されたものになります。

Fordyceはそれまでの「痛み」そのものへの対応から患者の痛み行動に対する行動療法、その後の第二世代の認知行動療法へと発展させます。

どーゆうことなんでしょうか?とりあいずおいといて、後で見ていきましょう。

この認知行動療法導入は、世界の慢性疼痛治療を劇的に変えたみたいです。

この変革より慢性疼痛医療は、生物医学的モデルから生物心理社会的モデルへとシフトしました。

現在、慢性疼痛に対する第二世代の認知行動療法の有効性については国内外で、多数のエビデンスも多く存在します。

慢性疼痛患者に対する認知行動療法は疼痛診療ガイドラインでも推奨されています。

認知行動療法は発展の歴史に伴い第一世代、第二世代、第三世代と大きく分けて3つに分かれているようです。

ペインリハビリテーション入門 沖田実ら 三輪書店 より引用

現在、慢性疼痛患者に対して広く適用されいているのが第二世代の認知行動療法でこれが狭義の認知行動療法とされています。

慢性疼痛患者に対する認知行動療法は痛みの四重円理論の中でも特に痛み行動に有効と言われています。

ペインリハビリテーション入門 沖田実ら 三輪書店 より引用改変

ちなみに四重円理論はLeserによって提唱された理論になります。

痛みは侵害神経が受容した後、中枢で知覚されますが、これは過去の経験や侵害受容時の状況など心理社会的因子をも含めた個人の痛み(感)として認知されています。

そして、この痛みが個人の身体的・精神的な苦悩に発展し、これが増幅してしまった結果として最終的には「痛い」と発言したり、薬を飲むなどといった痛み行動として表出されてしまう。というもの。

侵害受容して痛みとして知覚した結果、苦悩しそれが行動に影響するということを階層的にみたものになります。

話に戻ります。先ほども伝えましたが、認知行動療法は痛みの四重円理論の中でも特に痛み行動(患部に手を当てるなど)に有効と言われています。

通常、慢性疼痛患者は痛み行動により周囲の擁護的・同情的な対応など疫病利得が得られると、患者にとって社会的報酬となり、結果、これを欲しがるために、ために痛み行動が強化される条件付け(オペラント学習型疼痛)が起きやすいです。

認知行動療法はそんな慢性疼痛患者に対して、患者教育を通してこのような認知の修正を図り、健康的で社会的な行動パターンに変え、学習させることを狙った治療法であります。

最近は受容を治療目標としたマインドフルネスなどの第三世代の認知行動療法も慢性疼痛患者に適用されているようです。

ちなみにマインドフルネスとは「今の瞬間にしていること、感じていること、そこに存在している」といった精神状態のことであり、慢性疼痛患者における受容とは痛みに関連した感覚・思考・感情に捉われない生活上の意味ある行動に取り組んでいくといった積極的な意思のこと。

認知行動療法理論に基づくリハビリテーションの考え方

認知行動療法の中核となる※認知行動モデルでは、あるイベントに対する反応を「認知」「感情」「身体感覚(症状)」の4側面の連関・循環として捉え、これらの悪循環により問題行動や症状が出現すると考えられています。

※認知行動モデルとは慢性疼痛患者の場合、痛みの捉え方や考え方である「認知」、痛みに伴う抑うつ、不安、恐怖などの「感情」、痛がる、安静にする、行動・活動を回避するといった「行動」、痛みなどの症状とそれに関連する家族・職場・社会での人間関係、金銭問題や補償問題など「身体感覚(症状)・環境」の連関・悪循環を示すモデルのことを指します。

慢性疼痛患者の痛み行動もこれらの4側面が相互に関連し合うことで、生じ、その結果、慢性的な痛みや機能障害さらには生活の質(QOL)低下をきたしていると考えられています。

これらの4側面は相互に自由に影響し合うが、一般的に認知(破局的思考、消極的な思考)→情動(不安、恐怖、怒り)→行動(痛み行動、行動回避)の経過をたどることが多いとされています。

4側面のうち「情動」と「身体症状」は結果として生じているため、患者自身の努力変化・改善させることは難しいとされていますが、「行動」と「認知」は変化させうる治療ターゲットといわれています。

慢性疼痛の多くがオペラント型条件疼痛になります。

ペインリハビリテーション入門 沖田実ら 三輪書店 より引用

痛み行動を続けることで家族や社会からの関心や支援など社会的報酬を得ることを学習し、不適応行動・認知・思考を定着させていきます。

慢性疼痛患者は痛みへの固執・注意が強く、痛みが諸悪の根源との考え方(認知)から、痛み行動を持続・増悪させ(行動)、自らQOLを低下させている場面が多いです。

この悪循環からの脱却、そして好循環へ繋げることが慢性疼痛治療の原則であり、そのためには認知行動療法の理論に基づき、身体活動を促進するリハビリテーションが重要になります。

そのような患者に対して、不適応行動で会る痛み行動を消去(訴えを傾聴する程度に留める)し、頑張ってできたことや、やろうとした適応行動を強化(賞賛や関心、支援してあげる)をすることで行動の変容を導くことが重要になります。

そのうえで、認知再構成が必要になりますが、慢性疼痛患者は「0か100か」、「全か無か」の完全主義心の読みすぎ・先読みの誤りから不安を感じて回避する傾向、すべき思考のために他者への怒りをいだきやすいなど極端な思考傾向にあります。

そのため、運動パターンも極端でペーシング不良により失敗体験を繰り返すうちに自己効力感が低下します。

そこで認知行動療法リハビリテーションでは小さな成果をたくさん集めて達成感を確実にかつ数多く体験する過程を経て、対処能力を蓄積し、自己効力感を向上させることが重要になります。

では認知行動療法では実際にどのように動いていくか?オペラント条件付けやレスポンテンド条件付けについてもまた見こうと思います

それではまた。

コメントを残す